蚕神猫の話

 「祈りのかたち」の本の中で私は養蚕信仰について記述しています。養蚕信仰の中では繭玉のさなぎを食べる鼠を退治する猫を神様として崇めました。猫さん大出世です。何せ寝すぎて干支の十二神には、おしくも入れませんでした。もちろん鼠を食べる蛇も神様として崇められましたが、私は猫さんを特化して「蚕神猫(さんしんねこ)」という猫の神さまの作品を作りました。


 作品は粘土で作り石膏で型抜きして一旦石膏に素材を置き換えます。その後更にシリコンで型抜きしてから、そこに漆を麻に塗って貼り込んでいく型抜きの脱乾漆で作りました。私は本来木彫作家なのですが、眼がよく見えなくなってきたため、刃物は丁重に棚にしまい、粘土で作品を作るようにしました。型抜きですが、脱乾漆で作った初めての猫です。


 脱乾漆について少し技法の説明をします。脱乾漆は天平時代に流行した技法です。乱暴な説明で申し訳ないのですが、漆の貼りぼて彫刻といえば分かり易いと思います。興福寺の阿修羅像や唐招提寺の鑑真和上像などが有名です。残念ながら「祈りのかたち」では群馬県に脱乾漆の仏像が存在しないので本の中では書けませんでした。脱乾漆は木彫に比べて形は甘くなりますが、漆特有の柔らかさが魅力です。鑑真和上像をシャープに形を作り込むのではなく、緩い形の中にこそ、鑑真が抱えてきた苦悩、そして尊厳が表現されていると感じます。秋篠寺の伎芸天は頭だけ木で作り体は脱乾漆で作っています。これは、プロ中のプロの判断です。恐れ入りました。素晴らしいの一言です。


 え~すみません、私の蚕神の話に戻ります。私は色が使いこなせなくなってしまいまして、自分で何とか判断できるのが黒と白なのです。白猫に黒の模様にすることも考えましたが、脱乾漆の特徴を前面に出し、クロネコに白の模様猫に仕上げました。


 更にこの蚕神猫を3Dコピーで縮小し、硬質石膏で仕上げ、その上に漆と若干の彩色をしたのが蚕神猫ミニです。石膏心脱乾漆などというふざけた技法なを付けました。遊びココロとご理解ください。